歳をとると、誰にでも現れるのが老化現象です。体力が減少する、シミやシワが増える、免疫力が低下するなどの症状に悩まされます。
加齢による老化現象の影響が出る部分は様々です。目も例外ではありません。歳を重ねるごとに衰え、機能が損なわれていきます。一般的に老眼と言われているものが目の老化現象にあたります。
老眼になると水晶体が固くなり、近くにあるものにピントをあわせづらくなります。一方、遠くにあるものは普通に見えます。
老眼の見え方は軽度の遠視の見え方に似ています。しかし、遠視が眼軸長(がんじくちょう)という角膜の頂点から網膜までの長さが原因の屈折異常であるのに対し、老眼はピントを調整する力が衰える調節障害に該当します。
老眼と遠視は別のものであり、矯正の方法も異なることを覚えておきましょう。老眼は老眼鏡や遠近両用(マルチフォーカル)のコンタクトレンズを使い、矯正します。
放置すると頭痛や吐き気、肩こりといった眼精疲労の症状に繋がることがあるため、いずれかの方法を用いて矯正をすることが推奨されます。
残念ながら、老眼を完全に防ぐことはできません。予防はできませんが、水晶体の厚さを調節する毛様体筋を鍛えることで、老眼の進行を遅らせることはできます。毛様体筋は、例えば以下のような方法で鍛えられます。
・近くと遠くを交互に見る
・顔を固定したまま眼球だけを回す
また、ルテインという栄養素が豊富なほうれんそうやパセリ、アスタキサンチンという栄養素が豊富なカニ、エビ、サケなどは、抗酸化作用があり、目の老化に効果的です。
高齢になると老眼になるだけではなく、眼病を発症するリスクも高くなります。加齢が原因でリスクが高まる眼病は、以下の3つが代表的です。
【1.白内障】
水晶体が濁る病気で、ものを見づらくなります。40歳頃から発症が確認されており、80代頃になると、ほとんどの人が発症すると言われるほどメジャーな病気です。進行すると視力が低下し、失明する恐れがあります。治療のためには手術が必要です。
白内障は、酸化ストレスの増加が原因です。酸化ストレスを減らすことが予防に繋がります。前述したほうれんそうやパセリ、カニ、エビ、サケのような抗酸化作用を持つ食材を摂取することで、酸化ストレスを減らすことができます。睡眠不足も酸化ストレスを蓄積させる一因です。質の良い睡眠を充分にとるようにしましょう。
【2.緑内障】
毛様体で作られる房水(ぼうすい)という液体が循環しづらくなり、眼圧が上がる病気です。これにより視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)という部分に障害を与えます。
緑内障になると、視界の一部が欠けて見えるようになります。視界の外側が欠け始めてようやく気づくことができる病気で、失明の大きな原因とも言われています。一度欠けた視界は回復させることができません。
現在のところ、緑内障の効果的な予防方法は発見されていません。目の老化は抗酸化作用を持つ栄養素を摂取することで進行を遅らせることができますが、緑内障は加齢の他に、遺伝や近視が原因で発症することもあります。
予防とまでは言えないものの、暗闇での読み書き、水分やカフェインのとり過ぎ、喫煙は眼圧を高めるため、避けたほうが良いでしょう。また、ウォーキングやジョギングのような適度な運動は眼圧を下げるとも言われています。
緑内障は、定期的な検診が重要な病気です。早めに発見して治療をすることで、失明するほどに悪化するリスクを減らせます。
【3.加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)】
網膜の中央にある黄斑(おうはん)という部分に老廃物が溜まり、異常が現れる病気です。進行すると視力が0.1を切ることもあり、文字も満足に読めなくなります。また、色覚にも影響が出て、色が分からなくなることもあります。
加齢黄斑変性のリスクを高める生活習慣に喫煙があります。現在、喫煙している方は禁煙を心がけましょう。
反対に、リスクを減らすにはアントシアニンという栄養素を含むブルーベリーやブドウ、カシス、亜鉛という栄養素を含む牡蠣や牛肉、レバーなどを摂取しましょう。
老化現象はだいたい40歳頃から現れ始めると言われています。40歳頃になって、突然以下のような症状が現れた方は老眼や白内障、緑内障、加齢黄斑変性の可能性があります。早めに眼科で検診を受けることをおすすめします。
・手元にあるものや文字が見づらい
・遠くは見えるのに近くは見づらい
・ものがかすんで見える、二重や三重に見える
・光がまぶしく、屋外でものを見づらい
・見える範囲が狭くなった
・視界がゆがんで見える
・視界の中心が暗く見える
多少の違和感を「一時的なもの」と放置するのではなく、しっかりと検査をし、原因を特定してもらうことが、失明のような最悪の事態を避けることに繋がります。